拒食のお子さんが回復するために必要なのは「学び」だけではありません

拒食のお子さんについて本を読み、調べ、学び続けているのに状況が変わらない――
そう感じたことはないですか?
この記事では、25年間摂食障害を経験し公認心理師として2000人以上の親子と関わってきた大橋とも(オレンジ)が、「知識をつけること」だけでは回復が進みにくい理由と、そこから一歩進むための考え方をお伝えします。
「知っている」だけでは、お子さんは回復しない
「対応を学んでいる。なのに、なぜ良くならないんだろう」
わが子がみるみる痩せていく——。
娘さんの些細な言葉に、どう返せばいいのか分からず固まってしまう。
「良かれと思って」かけた言葉が、逆に地雷になってしまう。
昨日はうまくいった声かけが、今日はまったく響かない。
病院でも学校でも、
「うちの子にどう対応したらいいのか」誰も教えてくれない。
情報もアドバイスももらえない。
それどころか、ようやく見つけた支援先でも
摂食障害への理解がない言葉で、
親子ともに傷ついてしまった――。
——そんな経験はありませんか。
だからこそ、
「母親の私がこの子を助けないと」
「もっと学ばないと」
「知識をつけないと」
そう思って、一人でがんばり続けているお母さんへ。
学びを増やしているのに、状況が変わらないのはなぜ?
わが子を助けたい、元気になってほしい。その思いがあるからこそ、
本を読み、
ネットで調べ、
講演会に足を運び、
SNSで似た境遇の人を探す。
拒食症、過食症、摂食障害、トラウマケア…。気づけば専門書が本棚に何冊も並んでいる。
私自身も、自分の摂食障害を治したくて片っ端から本を読んできました。
だから「知識をつけること」の大切さは痛いほど分かります。

(私が読んできた摂食障害の本のほんの一部)
そして、知らなかったことを知ることで確かに変わることもありますよね。
以前より食べるようになった。
刺激しないように声をかけているので、
家の中で荒れることも減った。
——確かに、前よりはよくなった。
でも、こんな気持ちもありませんか。

本当は『おいしいね』って食べてほしい。でも、この子は体重を落とさないように、嫌々食べているだけ…
食事や生活のこだわりは変わらない。でも何か言うと刺激してしまうし、もうどうしたらいいか分からない…
「だから、もっと学ばないと!」
そう思ってしまうのは、
あなたの学び方が足りないからではありません。
摂食障害は”料理”と同じ ―「知っている」と「作れる」は別のこと
ちょっと想像してみてくださいね。
料理のレシピ本を隅々まで読み込んだとしても、
それだけで「美味しい料理」が作れそうですか?
実際に鍋を持ち、食材を切り、火にかけてみて初めて分かることがありますよね。
今日の玉ねぎは水分が多いから炒める時間を変えよう。
塩加減はレシピ通りではなく、
家族の好みに合わせよう。
同じレシピでも、
作る人によって、食べる人によって、
“ちょうどいい塩梅”は変わります。
お子さんへの声かけも、料理と同じです。
本に書いてある「こう言うといいですよ」という言葉は、あくまで一般的な”レシピ”にすぎません。
それをそのまま、あなたのお子さんに当てはめても、ぴったりはまるとは限らないのです。
「うちの子に届く関わり方」は、実践の中でしか見えてこない
① 知識を得る(レシピを読む)
② 実際にやってみる(料理してみる)
③ お子さんの反応を見る(味見をする)
④ 合わなければ調整する(次は塩を減らす)
この繰り返しの中でしか、「お子さんに本当に届く関わり方」をアレンジしていくことはできないんです。
一人でこのサイクルを回すのが難しい理由
「家で試行錯誤すればいいのでは?」
そう思う方もいるかもしれません。
でも実際には、一人でこのサイクルを
回し続けるのは想像以上に消耗します。
うまくいかなかった時、
「なぜうまくいかなかったのか」を冷静に振り返る余裕をもつことは難しいですよね。
目の前で我が子が食べない、
痩せていく、
苦しそうにしている。
その状況で客観的な分析を続けるのは、
並大抵ではないと思います。
そして、たとえ良い変化があっても、
それが”たまたま”なのか、
“再現できる関わり方”なのか、
“なぜ良い変化になったのか”を
分析することは一人では判断がつきません。
摂食障害の回復はご本人もご家族も
「やるのは、あなた。
でも、一人ではできない」という
有名な言葉があります。
だからこそ必要なのが、フィードバックをくれる存在です。
(私も、今も、心理学、トラウマ、コミュニケーションなどいろいろな分野の先生からフィードバックをいただいています)
支えが必要なのは、お子さんだけではありません
拒食のお子さんを支える中で、多くのお母さんが無意識に自分のケアを後回しにせざるを得ないのではないでしょうか?
娘の食事の心配、通院、学校とのやり取り、
時には心ない言葉を投げかけられることも…。
それでも我が子のために向き合い続けてきた
——お母さんも本当にがんばっていらっしゃることと思います。
この子が治れば、私は安心できるのに。と
必死になっている方も多いのではないでしょうか?
実は、お子さんが”ありのままの自分でいい”と思えるようになって摂食障害から回復し、安心して食事ができるようになるために必要なのは、
お母さん自身が「私はこれでいい」と思える安心感を持てていること。それが、実はとても大切な出発点です。
そして、それが実現できるようになるためには、
お母さんご自身が
“ありのままのあなたでいいよ”と
他者からたくさん言ってもらう体験を
積み重ねることなんです。
お母さん自身が安心できると、その安心感はお子さんにも伝わります。
支えられるべきなのは、
お子さんだけではなく、
お母さんご自身でもあるのです。
お母さんも一人で抱えず、支えを得られる場所を
「親子過食卒業レッスン」では、この考え方をもとに、グループセッションと個別セッションを組み合わせてサポートしています。
グループでは、同じように悩むお母さん方や当事者の方と経験や気づきを分かち合えます。
「うちだけじゃなかったんだ」という安心感、「そんな声かけがあったのか」という新しい引き出しが得られます。
個別では、あなたのお子さんの”今”に合わせて、一緒に振り返り、次の一歩を考えていきます。
まさに、あなたとお子さんだけのオーダーメイドのレシピを作っていくイメージです。
「グループが苦手」という方へ
「人前で話すのは抵抗がある」その気持ちはとても自然です。
ご安心ください。個別セッションだけのコースもあります。
大切なのは、”正しいやり方”に自分を合わせることではなく、あなたとお子さんに合った形で、実践とフィードバックのサイクルを回し続けられること。
最後に
拒食からの回復は、決して平坦ではありません。波もあり、一進一退を繰り返します。
でも、知識をインプットするだけの日々から、
「実践して、フィードバックをもらい、また試す」
このサイクルに入ることができれば、その一歩一歩は確実に回復へ向かいやすくなります。
そして、その道のりをどうか一人で抱え込まないでくださいね。
大事なお子さんを支えるお母さんにこそ支えが必要です。
あなたが安心できる場所があってこそ、お子さんも「ありのままの自分でいい」と思える土台を一緒に育てていきませんか?
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よくあるご質問
Q. 知識を学ぶこと自体は無駄なのでしょうか?
A. いいえ、無駄ではありません。知識は土台として必要です。ただ、知識だけでは「うちの子に合った関わり方」までは見えてこないため、実際に試してお子さんの反応を見て調整する、というステップが必要になります。
Q. グループセッションが苦手な場合はどうすればいいですか?
A. 個別セッションのみのコースもご用意しています。ご自身に合った形を選んでいただけます。
Q. 母親自身のケアも必要と言われるのはなぜですか?
A. お子さんが安心して回復に向かうためには、支えるお母さん自身が安心感を持てていることが土台になるためです。お母さんのケアは、遠回りではなくお子さんの回復に直結する大切な要素です。
※本記事は、摂食障害の当事者経験および公認心理師としての臨床経験に基づく一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。症状の程度によっては医療機関への受診が必要な場合があります。個別の症状については医師・医療機関にご相談ください。
大橋 とも(オレンジ)
公認心理師/過食卒業レッスン主宰
25年間の摂食障害当事者経験と、公認心理師として2000人以上のご本人・ご家族と関わってきた経験をもとに、家族支援コーチングプログラム「orange-mindful」を主宰。著書『わが子が摂食障害になったら読む本』(2026年5月出版)はAmazon「ストレス・心の病気」部門予約ランキング1位を獲得。LuckyFM茨城「ダイバーシティニュース」出演、読売新聞オンライン「ヨミドクター」、婦人公論JP連載など、メディアでも摂食障害・回復について発信している。
📰 メディア掲載情報
・婦人公論JP:記事一覧はこちら
・読売新聞オンライン「ヨミドクター」:記事はこちら
・Yahoo!ニュース/MSNニュース/ライブドアニュース/dニュース/au Webポータル等でもご紹介いただいております
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講師:大橋とも(オレンジ) 司会:小林亜希子(同センター代表/公認心理師・臨床心理士)

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