拒食症はどう治るの?「もっと食べなきゃ」の前に、本当に大切なこと

拒食症はどう治るの?「もっと食べなきゃ」の前に、本当に大切なこと
こんにちは。
摂食障害専門・公認心理師の大橋ともです。
「拒食症を治すために必要なのは、『もっと食べること』だと思っていませんか?」
お母さんも、ご本人も、周りの人も、
「とにかく食べられるようになれば良くなるはず」
と思うことが少なくありませんよね。
もちろん、栄養をとることや体重を回復させることは大切です。
でも、拒食症の方のお話を聞いていて感じるのは、

食べることだけに目を向けていると、かえって回復から遠ざかってしまうことがある
ということです。
なぜなら、拒食症の人にとって「食べること」は、私たちが想像する以上に大きな恐怖だからです。
「もう少し食べてみよう」
という言葉は、周りから見れば小さなことに聞こえるかもしれません。
けれど本人にとっては、
・崖から飛び降りるような恐怖だったり、
・自分が壊れてしまうような恐怖だったり、
・一度食べたら、どこまでも太ってしまって、止まらなくなるのではないかという怖さだったり、
時には死ぬほど苦しい感覚を伴うことさえあります。

だからこそ今日は、
「もっと食べること」よりも先に大切なことについてお話ししたいと思います。
※低体重の場合は、入院を含む医療が必要な場合もあります。今回は、医療の専門家ではない、本人や周囲の人ができることをお伝えします。
今食べられていることを認める
拒食症になると、周りはどうしても
「それしか食べてないの?」
「もっと食べなきゃ」
「栄養が足りないよ」
と思ってしまいます。
拒食症の人にとって「食べる」はどれくらい怖いのか
拒食症ではない人にとっては、
「食べるのが怖い」
という感覚は、なかなか想像しにくいかもしれません。
そこで、一つ例え話をしてみたいと思います。
もし、ある食べ物を食べると、
その食べ物がお腹の中でどんどん膨らみ、
胃がはじけてしまいそうになるとしたらどうでしょう。
あるいは、
消化されずに硬い塊のまま胃の中に残り続け、
重たくて苦しくて、
出したくても出せない感覚が何時間も続くとしたらどうでしょう。
きっと、
「食べたくない」
「怖い」
と思うのではないでしょうか。
さらに、その食べ物には別の特徴があります。
たった一口食べただけで、
体重が何十キロも増えてしまうように感じる。
今まで着ていた服が入らなくなる。
思うように動けなくなる。
周りから、
「太ったね」
と思われるかもしれない。
嫌われるかもしれない。
悪口を言われるかもしれない。
そんな恐怖までセットになっていたらどうでしょうか。
おそらく多くの人は、
その食べ物を口に入れること自体が怖くなると思います。

もちろん、実際には一口の食べ物で急激に太ることはありません。
けれど、拒食症の人の脳や心の中では、それに近い恐怖が起きていることがあります。
だから、
「たった一口くらいで太らないよ」
「もっと食べないと体に悪いよ」
ではなく、
「食べることで、死ぬほど苦しい思いをしている」
「それほど怖い中で頑張っているんだね」
という理解がとても大切なのです。
拒食症の回復は、
食べさせることから始まるのではありません。
まずは、その恐怖を理解することから始まります。

でも本人は、食べることへの恐怖と毎日戦いながら、精一杯食べていることも少なくありません。
例えば、
- ヨーグルトを一つ食べた。
- バナナを半分食べた。
- おにぎりを一口食べた。
それは周りから見ると少なく見えるかもしれません。
でも本人にとっては、とても勇気のいる行動だったかもしれないのです。
だから、
「こんなに少ししか食べていない」
ではなく、
「怖いのに食べたんだね」
「ヨーグルトを食べるの頑張ったね」
「今日は昨日より少し挑戦できたんだね」
と伝えてみてください。
回復は、できていないことを見るところからではなく、できていることを見るところから始まります。

食べることの良い面を伝える
拒食症の人の頭の中は、
「食べたら太る」
という恐怖でいっぱいになっています。
すると、食べることのメリットが見えなくなってしまいます。
だから、体重の話だけではなく、食べることで得られるものも伝えてほしいのです。
例えば、
「食べると元気が出るよ」
「好きなダンスがもっとできるようになるよ」
「友達と遊ぶ体力が戻ってくるよ」
「集中力が上がって好きなことを楽しめるよ」
「旅行や推し活ももっと楽しめるようになるよ」
「夢に向かう力になるよ」
食べること=太ることではありません。
食べること=ダメな自分になることでもありません。
食べること=元気になること
食べること=自分の心と体を満たすために必要なこと
ご本人が生きる力を取り戻すために食べるのです。
本人が好きなことや大切にしていることと結びつけて伝えることで、食べることへの意味づけが少しずつ変わっていきます。

「どんな体形でも大切だよ」を伝える
拒食症の人の多くは、
心のどこかで
「太ったら嫌われる」
「価値がなくなる」
「愛されなくなる」
という不安を抱えています。
実際には誰もそんなことを言っていなくても、
本人の中ではとてもリアルな恐怖として存在しています。

だから、体重や見た目の話以上に伝えてほしい言葉があります。
それは、
「どんな体形でも大好きだよ」
「痩せていても太っていても大切な存在だよ」
「あなたの価値は体重では決まらないよ」
というメッセージです。
本人が本当に必要としているのは、
細い体への評価ではなく、
存在そのものへの安心です。

拒食症の本人が今できること
もしあなた自身が拒食症で苦しんでいるなら、
まず知ってほしいことがあります。
あなたは弱いから食べられないのではありません。
怠けているからでもありません。
食べることに強い恐怖を感じざるを得ない経験をしているからこそです。
だから、いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。
今日できたことを探してくださいね。
・ヨーグルトを食べた
・あめを舐めた
・一口多く食べられた
・休むことができた
・誰かに気持ちを話せた
・学校に行けた
・病院に行けた
そんな小さなことでも十分です。
回復は、大きな一歩ではありません。
新しい別の誰かになることでもありません。
あなたが今できていることを、少しだけ増やしいていくことが回復の道のりです。
まずは、体重や見た目だけで自分の価値を決めない練習をしてみませんか?。
あなたには、体重計の数字よりもずっと大切な価値があります。
家族や友人ができること
家族や友人は、本人を心配するあまり、つい食事量や体重ばかりに目が向いてしまいますよね。
でも、本人が本当に必要としているのは、心配ではなく信頼です。
食べた量よりも頑張りを認める
「それしか食べていないの?」
ではなく、
「怖かったのに食べたんだね」
と声をかけてみてください。
体形についてコメントしない
「痩せたね」
「少し太った?」
そんな何気ない言葉が、本人を苦しめることも…。
良かれと思って言った言葉でも、体形への意識を強めてしまうことがあるんです。
太ることへの恐怖を否定しない
周りの人が
「そんなの気にしすぎだよ」
と言われても、恐怖は消えないんです。
まずは、
「太るのが怖いんだね」
「それだけ不安なんだね」
と気持ちを受け止めることが大切です。
どんな姿でも大切だと伝える
拒食症の回復の中で、何度も伝えてほしい言葉があります。
「あなたが大切」
「あなたが大好き」
「体重が増えても減っても変わらない」
本人は、一度聞いただけでは信じられないことがあります。
だからこそ、何度でも繰り返し伝えてほしいのです。
拒食症は「食べない病気」ではない
拒食症は、単に食べない病気ではありません。
多くの場合、
「頑張りすぎてきた心」
「自分に厳しすぎる心」
「ありのままでは愛されないという不安」
が背景にあります。
だから回復とは、
食べられるようになることだけではなく、
「(痩せても痩せてなくても)そのままの自分でも大丈夫」
という安心を取り戻していく過程でもあります。
最後に
もし今、食べることが怖い中で、
ヨーグルトを一つ食べたなら。
おにぎりを一口食べたなら。
それは決して小さなことではありません。
その一歩は、回復への大切な一歩です。
どうかその頑張りを認めてあげてください。
そして、ご家族や周りの方も、
「もっと食べなさい」
の前に、
「怖い中で頑張っているんだね」
という理解を届けていただけたらと思います。
回復は、責めることからではなく、安心から始まります。
もっと詳しく知りたい方へ
この記事を読んで、
「食べないことの背景に、そんな苦しさがあるなんて知らなかった」
「つい『もっと食べなさい』と言ってしまっていた」
そう感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
摂食障害は、単に食べる量や体重の問題ではありません。
その背景には、
・太ることへの強い恐怖
・自分を責める気持ち
・ありのままでは愛されないという不安
・頑張り続けてきた心の疲れ
など、さまざまな苦しさが隠れていることがあります。
だからこそ、お子さんを支えるためには、症状だけを見るのではなく、その奥にある心のしくみを知ることが大切です。
私は自身も摂食障害を経験し、回復した当事者として、そして現在は公認心理師として多くのご本人やご家族の相談をお受けしています。
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この本では、
・拒食症や過食症はなぜ起こるのか
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