摂食障害のお子さんが「がんばりすぎてしまう」のはなぜか?

お母さん

娘が摂食障害です。今のところ、何とか学校には行っていますが、テストでいい成績とらないと!と
毎晩遅くまでがんばっています。

そんなにがんばると体に負担がかかるから「少しは休んだら?」と言っても、聞いてくれません。

娘が摂食障害になってから、娘優先の日々で
「この子が食べられるものを」と
何とか準備しますが

自分の夕ごはんは、
立ったまま残りものをつまんで終わりのことも。

「この子を助けてあげたい」、と思っているのに
ふとしたときに、
娘の何気ない一言にカッとなってしまうんです。

あとで我に返って、
「なんてことを言ってしまったんだろう」と、
反省する毎日です。

夜、布団に入っても、
娘のことが頭から離れなくて。

「明日こそちゃんと食べられるかな」
「明日は、どう声をかけよう」

と考えると、なかなか眠れないんです。

正直、体も疲れてきてしまって…。

でも、夫は理解がないし、
この子が話せる相手は私しかいないので、
休むこともできません
どうしたらいいか分からなくて悩んでいます。

あなたも、そんな毎日を、過ごしていませんか?

周りから「十分やっているよ」
「たまには休んだら?」と言われても、
なぜか休めない。休んではいけない気がする。
それは、お母さんの意志が弱いからでも、要領が悪いからでもありません。

こんにちは。公認心理師の大橋ともです。私自身、25年以上にわたる摂食障害の当事者経験があり、現在はトラウマ・愛着・マインドフルネスを専門に、『親子過食卒業レッスン』を主催しています。

このシルバーウィーク、私は摂食障害の回復に関わる本を新しく読んだり、自分が学んでいる先生から個人セッションを受けたりして過ごしていました。その中で出会ったのが、「頑張りすぎてしまうのはなぜ?」をテーマにした専門書です。

読みながら、「これは、摂食障害のご本人にも、ご家族にも、そして過去の私にも、そのまま当てはまる」と感じました。

今日は、その本から学んだことと、私自身の経験、そして親子過食卒業レッスンのグループ講座や個別セッションでお母さんたちとお話ししてきたことを重ねながら、「頑張りすぎ」の正体と、そこから抜け出すための「6割でOK」「人と共に進む」という練習についてお伝えします。

📌 この記事でわかること

  • 「頑張りすぎて休めない」心と体のしくみ
  • 摂食障害のご本人とご家族に共通する「がんばりすぎのループ」
  • 今日からできる「6割でOK」「人と共に進む」4つの練習
  • お母さんの姿が、お子さんの回復のモデルになる理由

この記事を書いた人

大橋 とも(オレンジ)

公認心理師/『親子過食卒業レッスン』主催
トラウマ・愛着・マインドフルネスが専門。25年以上の摂食障害の当事者経験から回復。

📕 著書:『わが子が摂食障害になったら読む本』(ビジネス社)
📰 掲載:読売新聞オンライン/ヨミドクター婦人公論.jpYahoo!ニュース
📻 出演:LucuyFM「ダイバーシティーニュース」

🎤 登壇・講師実績

  • 株式会社dreamin「食べ過ぎと心のストレスセミナー」講師
  • NPO法人マインドフルネス心理臨床センター「過食とマインドフルネス」セミナー講師
  • NPO法人マインドフルネス心理臨床センター『わが子が摂食障害になったら読む本』出版記念セミナー講師
  • NPO法人マインドフルネス心理臨床センター MBRP講師養成講座講師(第2期)、MBRP講師(第4期)
  • トラウマリカバリーカレッジあさがや主催「自分とつながり、関係を育む非暴力コミュニケーション――基礎から学び、体験に聴くNVC入門」登壇
  • 起業家勉強会「アダルトチルドレンと家族関係」セミナー講師
目次

「頑張りすぎて休めない」のは、なぜ?

がんばることをやめられないのは、性格の問題なのでしょうか?

実は、違います。

自分で自分のことを「いい」と思えないと、外からの評価が、そのまま「自分の存在価値」になってしまいます

すると、がんばること=生きることになる。がんばるのをやめると、「自分が生きていていい」という感覚まで、なくなってしまうのです。

「がんばり」は、手を離せない浮き輪

たとえるなら、「がんばり」は、深い海で必死につかまっている浮き輪のようなものです。

腕がしびれても、体が冷えきっても、手を離したら沈んでしまう気がする。だから、離せない。周りから見れば「もう岸は近いよ」「少し休んでも大丈夫だよ」と思えても、本人にとって手を離すこと(がんばりをやめること)は、「沈むこと」と同じくらい怖いのです。

私は、まだ十分じゃない。ここで休んだら、私の居場所がなくなってしまう……。と感じていると、

体がどんなに疲弊していても、仕事や家事、家族のお世話など、「だれかのためにやること」を止められない。

休めないのは、怠けたくないからではない。
「休んだら、私には価値がない」という恐怖があるから。

私自身も、「一人でがんばる」を止められなかった

過去の私も、まさにそうでした。

自分の体のサインを無視して、朝5時から仕事をし、フルタイムで働いたあとにジムへ行き、閉店までトレーニング。へとへとになって、倒れるように眠る。そんな生活を続けていた時期があります。

当時の私は、外にいれば食べずにすむし、運動で自分を追い込むことは「よいこと」だと思っていました。

ところがある日、高熱が出て、体のあちこちが痛み、動けなくなりました。急いで病院に行くと、いろいろな検査の数値が悪くなっていて、医師から「なんでこんなになるまで放っておいたんだ」「運動禁止、絶対安静」と言われたのです。

今ふり返ると、あのときの私は、「一人でがんばる」を止めることが、どうしてもできなかったがんばっている間だけ、自分がここにいていい気がしていたからです。

だからこそ、今「休めない」と苦しんでいるお母さんやお子さんが、とても苦しいだろうな、と感じています。

⚠️ 体からのSOSは、がまんしないで

高熱、体の痛み、強いだるさ、めまい、動悸、眠れない日が続くといったサインがあるときは、「まだ大丈夫」と思わずに、早めに医療機関を受診してください。お子さんの体調や食事量の急な変化も同じです。体のサインに気づくことは、弱さではなく、自分と家族を守る力です。

お母さんにも起きている「がんばりすぎのループ」

この傾向は、摂食障害のご本人だけのものではありません。支えるご家族、とくにお母さんにも、とてもよく見られます。こんなこと、ありませんか?

✅ がんばりすぎチェック

  • つい、自分のことより家族のことを優先してしまう
  • つい、一人で抱え込んでしまう
  • 気づけばお子さんのことを考えていて、夜も眠れない
  • 自分の食事やセルフケアは、いつも後回し
  • わが子の些細な一言で爆発して、あとで激しく自分を責める

いくつ当てはまったでしょうか。もし多く当てはまったとしても、それはお母さんがダメだからではありません。それだけ一生懸命、お子さんを守ろうとしてきた証です。

爆発してしまうのは「赤モード」のサイン

疲れがたまり、心身の安心感が失われると、私たちの神経系はイライラや不安が強まる「赤モード」に傾きやすくなります。わが子の一言で爆発してしまうのは、赤モードのスイッチが入りやすくなっているサインです。さらに限界を超えると、何も感じられない、動けない「青モード」(シャットダウン)に入ってしまうこともあります。

安心して人とつながれる「緑モード」に戻るために必要なのは、根性ではありません。休息と、安心と、人とのつながりなのです。

頑張りすぎは、「生き延びるための方法」だった

専門書を読んで、深くうなずいたことがあります。

それは、頑張りすぎてしまう人の多くが、幼い頃から「誰かのためにがんばることで、居場所を確保してきた」ということ。つまり頑張りすぎは、その人がその環境で生きのびるための方法だったのです。

そこには、神経系の反応も大きく関わっています。ポリヴェーガル理論の視点で見ると、体が「安全ではない」と感じているとき、神経系は自分を守るために動き続けようとします。止まることが、かえって危険に感じられてしまうのです。だから頑張りすぎは、自分の意志だけで止められるものではありません。

「DOの自信」から「BEの自信」へ

「わが子が摂食障害になったら読む本」でもお伝えしている「DOの自信」は、「何かができるから、私には価値がある」という条件つきの自信です。これだけで自分を支えていると、がんばりを止めた瞬間に、足元が崩れてしまいます。

回復に必要なのは、「何もできなくても、私はここにいていい」という「BEの自信」(無条件の自信)を、少しずつ育てていくこと。そしてBEの自信は、一人きりではなく、安心できる人との関わりの中で育っていきます。

やめられない自分を、責めなくていい。
それは、あなたが生き延びてきた証です。

抜け出すカギは「6割でOK」と「人と共に進む」

では、どうしたらいいのでしょうか。

答えは、「もっと頑張ってやめる」ではありません。
「6割でOK」と「人と共に進む」。この2つを、少しずつ練習していくことです。

これまで(一人でがんばる)これから(人と共に進む)
完璧に、一人でがんばる人の力を借りながら進む
100%よいと思えたら、やってみる6割よいと思ったら、とりあえずやってみる
もっと調べて、100%自分でやる6割は自分で、4割は人に助けてもらう

ここからは、今日からできる4つの練習をご紹介します。

1.「6割よい」と思えたら、とりあえずやってみる

準備も下調べも、タイミングも時間も、体力もお金も、すべてが理想通りにそろう日は、なかなか来ません。「6割いいな」と思えたら、小さく一歩を踏み出してみましょう。たとえば、相談窓口に電話してみる、家族会をのぞいてみる、本を1章だけ読んでみる。それで十分です。

2.「6割は自分でできたら花丸」を合言葉にする

家事も、情報収集も、お子さんへの声かけも、全部をお母さん一人でやらなくていいのです。夕食の1品はお惣菜にする、パートナーに通院の付き添いをお願いする、きょうだいのお迎えを頼む。4割を人に任せることは、手抜きではなく「長く伴走するための工夫」です。

3.「小さなお願い」から練習する

いきなり大きなSOSを出すのは、頑張りすぎてきた人ほど難しいもの。まずは「ちょっと話を聞いてもらえる?」「この書類、一緒に見てもらえる?」くらいの小さなお願いから。Iメッセージで「私は、手伝ってもらえると助かる」と、要望として伝えるのがコツです。

4.1日1回、体のサインに気づく時間をつくる

疲れに気づけなければ、休むこともできません。1日1回、ゆっくり息を3回吐きながら、肩やお腹、足の裏の感覚に意識を向けてみてください。「あ、今、肩に力が入っているな」と気づくだけで、神経系は少しずつ緑モードへ戻りやすくなります。

💡 寝る前の「6割ノート」

夜、布団に入ったら「今日できなかったこと」ではなく、「今日できた6割」を1つだけ思い出してみてください。「ごはんは作れなかったけど、子どもの話を5分聴けた」。それで、今日は花丸です。

お母さんの「頼る姿」が、お子さんの回復のモデルになる

摂食障害のお子さんが「一人でがんばる」を手放すために、まず大切なこと。
それは、ご家族がその姿を見せてあげること
です。

お母さんが「わが子のことだから、私ががんばらないと」「誰もわかってくれないから、私一人でやらないと」を続けていると、お子さんはその背中から、「私ががんばらないと。誰もわかってくれないから、私一人でやらないといけないんだ」と学ぶことが少なくありません。

でも、このループを一人で断ち切るのは、とても難しいことです。だからこそ、まずはお近くにいるご家族から、こんなふうに考えてみてほしいのです。

お母さんから始める、新しい合言葉

「大切なわが子のことだから、私一人で抱えずに、誰かの力を借りてみよう」

「100%準備と下調べをして、タイミングも時間も、体力もお金もすべて理想通りになってから進む、ではなく、6割いいなと思ったら、とりあえずやってみよう」

お母さんが「6割でOK」「誰かの力を借りる」を見せることで、お子さんも「私も、完璧じゃなくていいんだ。6割でもいいんだ。一人で抱えずに、誰かの力を借りていいんだ」というモデルを学ぶことができます。

人に頼ることができるようになると、摂食障害に頼らなくても生きていけるので、過食・拒食の症状を手放すことができるようになれますよ!

言葉で「頑張らなくていいよ」と伝えるよりも、お母さん自身が休む姿、頼る姿を見せるほうが、お子さんの心には届きやすいのです。

お母さんが、先に頼る。
それが、お子さんへの大切な贈りものになります。

よくある質問

Q.休もうとすると、罪悪感でいっぱいになります。どうしたらいいですか?

A.罪悪感が出てくるのは、自然な反応です。長く「がんばること」で自分を支えてきた神経系にとって、休むことは慣れない体験だからです。いきなり長く休もうとせず、5分座ってお茶を飲むなど、小さな休息から始めてみてください。罪悪感が出てきたら「あ、今、罪悪感が出てきたな」と気づくだけで十分です。

Q.「6割でOK」だと、子どものためにならない気がします。

A.6割は「手を抜く」ことではなく、「一人で100%を背負わない」ということです。残りの4割は、医療機関や家族会、専門家など、人の力を借りて埋めていきます。お母さんが倒れずに長く伴走できることは、お子さんの回復にとっても大きな支えになります。

Q.誰に頼ればいいのか、わかりません。

A.まずは、お子さんの主治医や医療機関、地域の保健所・精神保健福祉センター、摂食障害の家族会などが相談先になります。身近なパートナーや家族、友人に「話を聞いてほしい」と伝えることも、立派な「頼る」です。専門家と一緒に進めたい方は、親子過食卒業レッスンのグループ講座や個別セッションでもご相談をお受けしています。

Q.子どもに「頑張らなくていいよ」と伝えても、響きません。

A.言葉だけでは、届きにくいことがあります。「頑張らなくていい」と言われても、本人の中では「頑張らない自分には価値がない」という恐怖が動いているからです。言葉よりも、お母さん自身が休み、頼る姿を見せることが、お子さんにとっての安心のモデルになります。

まとめ

📝 この記事のまとめ

  • 頑張りすぎて休めないのは、意志の弱さではなく、「休んだら価値がなくなる」という恐怖と神経系の反応によるもの
  • 頑張りすぎは、幼い頃から居場所を守るための「生き延びる方法」だった
  • 抜け出すカギは、「6割でOK」と「人と共に進む」の練習
  • お母さんが先に「頼る姿」を見せることが、お子さんの回復のモデルになる

完璧じゃなくていい。一人で抱えなくていい。

今日、6割でいいから、ひとつだけ誰かに頼ってみませんか。その小さな一歩が、お母さんの心を少し軽くし、お子さんの「私も、頼っていいんだ」につながっていきます。

■ この記事についての大切なお知らせ

本記事は、公認心理師としての知見と、筆者自身の摂食障害(摂食症)の当事者経験にもとづく情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療・アドバイスに代わるものではありません。大橋ともは、公認心理師として、MBRP(マインドフルネスに基づく依存症の再発予防プログラム)講師資格、ソマティック・エクスペリエンシング™(SE™)、AEDP®レベル1セラピスト、BCT(ボディコネクトセラピー)コアスキル修了等の知見をいかし、摂食症・トラウマ・愛着を専門に回復支援を行っておりますが、症状の程度や背景は人によって大きく異なります。体調の急な変化、食事がとれない状態が続く、強い気分の落ち込みなどがある場合は、主治医や医療機関にご相談ください。

一人で抱えずに、一緒に進みませんか

『親子過食卒業レッスン』では、グループ講座や個別セッションで、お母さんが「6割でOK」「人と共に進む」を安心して練習できる場をご用意しています。まずは体験セッションで、参加された方のご感想もあわせてご覧ください。

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📢 お知らせ

📕 著書『わが子が摂食障害になったら読む本』(松本功 監修/ビジネス社)
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著者プロフィール

大橋 とも(オレンジ)

公認心理師。『親子過食卒業レッスン』主催。25年以上にわたる摂食障害の当事者経験を経て回復し、トラウマ・愛着・マインドフルネスを専門に、摂食障害のご本人とご家族の回復を支援している。著書『わが子が摂食障害になったら読む本』(松本功 監修/ビジネス社)はAmazon「ストレス・心の病気」部門で予約1位。読売新聞オンライン(ヨミドクター)、婦人公論.jpなどに掲載、FMラジオにも出演。

【資格・研修】
公認心理師/ソマティック・エクスペリエンシング™(SE™)上級2を2026年秋修了予定(SEP認定取得見込み、全体トレーニング216時間・個人セッション54時間/3年間)/AEDP®レベル1セラピスト/MBRP(マインドフルネスに基づく依存症の再発予防プログラム)講師資格/BCT(ボディコネクトセラピー)コアスキル修了/小学校教諭・中学校教諭(数学)・高等学校教諭(数学)・特別支援学校教諭・学校図書館司書教諭

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