人の機嫌に振り回されて過食してしまうあなたへ ― 相手の感情に巻き込まれないようにするための3つの方法

人の機嫌に振り回されて過食してしまうあなたへ ― 感情は”返して”いい
あの人が怒ってる・・・
あの人が不機嫌・・・
なんか舌打ちしてる・・・
私が何かしたからかな? 早く機嫌をなおしてあげないと・・・
頭の中では、こんな声が止まらなくなる。表情や声のトーン、部屋の空気の変化にまで、アンテナがピーンと張りつめてしまう。
そんなふうに、誰かの「不機嫌」な気持ちを察しすぎては、何とかしないと!と引き受けすぎて、一人になった後、過食で発散している。
そんなことは、ありませんか?
1)なぜ、人の機嫌がそんなに気になってしまうのか
家庭の中でパートナーの声のトーンが少し変わっただけで、心臓がドキッとする。職場で上司がため息をついただけで、「私、何か失敗したかな」と頭の中がぐるぐる回りはじめる。友人からのLINEの返信が少し遅いだけで、「怒らせちゃったかも」と落ち着かなくなる。
誰かが話している言葉が強くなったり、大きくなったりするだけで、心がザワッとする。イライラした表情や、舌打ち、ドアの開け閉めの乱暴な音を感知するたびに、「私が何か怒らせるようなことをしたかな?」「どうしよう、どうしたらいいんだろう?」とビクビクしてしまう。
これは、私自身が過食に苦しんでいた頃、毎日のように感じていた感覚です。特別なことではなく、誰かの顔色をうかがいながら育ってきた人にとっては、ごく自然に身についてしまう反応でもあります。あなたにも、心当たりはないでしょうか。
2)「相手の感情を引き受ける」と、何が起きているのか
相手の感情を先回りして察知し、これ以上怒らないように、悲しませないように解決してあげる。そうすることで、その場は「怖い思いをしなくて済む」という短期的な安心が手に入ります。
よくある心の中のセリフ 「大丈夫、私が何とかするから」「私さえ我慢すれば、丸くおさまるから」「先に謝っておけば、機嫌が悪くならないはず」
こうした先回りは、その瞬間だけを見れば効果があるように感じられます。けれど、これを繰り返していくと、関係性そのものが少しずつ固定されていきます。あなたは常に相手の機嫌をうかがう役割に、相手は不機嫌になれば誰かが動いてくれる役割に、お互い気づかないうちに慣れてしまうのです。
たとえるなら、相手の荷物をずっと代わりに持ち続けているようなもの。持ってあげている間は相手はラクになりますが、いつまでも代わりに持ち続けていたら、相手は自分の荷物の重さや運び方を、自分では学べなくなってしまいます。
相手の感情を先回りして解決してあげるたびに、その人が自分で感情を抱える力を育てる機会を、知らないうちに奪ってしまうのです。そして、あなた自身の中には、行き場のない緊張や疲れが少しずつ積み重なっていきます。その蓄積が限界に達したとき、一人になった瞬間に、過食という形で外に出ていく。そんな流れに、覚えはないでしょうか。
3)「相手の感情は、相手に返す」という考え方
相手が何に怒っていたとしても、どんなに苦しんでいたとしても、それは「相手の感情」であり「相手の課題」です。あなたが引き受ける必要も、解決する義務も、本当はありません。
これは、「境界線」を引く、という大事な視点です。相手の「怒り」という表面的な反応の奥には、必ず満たされていない気持ちや、本当に望んでいることが隠れています。氷山にたとえると、水面に出ている「怒り」はほんの一角にすぎず、その下にはずっと大きな感情や願いが沈んでいるのです。
水面下にある部分まで見つけて、代わりに満たしてあげることは、あなたの役割ではありません。それに気づき、自分で満たしていくのは、相手自身の仕事です。あなたにできるのは、水面に出た波にいちいち飲み込まれず、自分の足元に立ち続けることだけです。
これは冷たく突き放すということではありません。相手を大切に思う気持ちと、相手の感情まで背負うことは、まったく別のことなのです。「相手の心は相手のもの」として境界線を引き直すことは、相手を見捨てることではなく、相手が自分の力で立ち直る余地を残してあげることでもあります。
4なぜ、人一倍「怖い」と感じてしまうのか
私たちの心には、危険を察知するための”警報アラーム”のようなしくみが備わっています。本来は、身を守るためにとても大切な機能です。
誰かの顔色を見て育ってきた人や、これまでに心が傷つく経験を重ねてきた人ほど、このアラームの感度が高く調整されていることがあります。同じ表情、同じ状況を見ても、人よりずっと大きく「怖い」と鳴ってしまう。それは性格が弱いからでも、気にしすぎだからでもなく、自分を守るために備わった、ごく自然なしくみなのです。
愛着の観点からも、小さい頃に安心できる関わりを十分に得られなかった場合、大人になってからも「見捨てられるかもしれない」「怒らせたら終わりかもしれない」という感覚が、必要以上に強く働いてしまうことがあると言われています。怒られないように機嫌を取る、何も言えなくなる、逆に先に怒ってしまう――これらはすべて、そのアラームから自分を守ろうとする防衛反応です。
5)「0か100か」の思考から、少しだけ抜け出す
「相手の感情は相手に返す」と聞くと、「じゃあ、もう相手のことを気にかけてはいけないの?」「冷たい人間になれということ?」と、極端に受け取ってしまう方も少なくありません。
けれど実際には、「全部引き受けるか、まったく気にしないか」という0か100かの二択ではなく、その間には広いグラデーションがあります。相手を思いやりながらも、相手の感情の後始末までは背負わない。そのちょうどいいバランスを、少しずつ探っていく感覚で十分です。最初からうまくできなくても、それは失敗ではなく、練習の途中にいるというだけのことなんですね。
6)今日からできる3つの練習
1
「これは誰の気持ち?」と自分に問いかける
誰かの不機嫌を感じたとき、反射的に動く前に、一呼吸おいて自分に聞いてみましょう。「これは私の気持ち? それとも相手の気持ち?」その一言だけで、巻き込まれ方が変わってきます。
2
相手の機嫌より、自分の機嫌にエネルギーを使う
相手をなだめることに使っていたエネルギーを、少しだけ自分に向け直してみる。好きな飲み物を淹れる、深呼吸をする、安心できる場所に移動する。小さなことで大丈夫です。自分の機嫌は、自分で取っていいのだと、まず自分自身に許可を出してあげてください。
3
一人で抱え込まず、安心できる相手に話してみる
長年身についた反応は、一人で気づいて、一人で手放していくのがとても難しいものです。信頼できる人や、専門家に「実はこんなふうに感じてしまう」と話してみるだけでも、自分を客観的に見つめ直すきっかけになります。
7)よくある質問
Q. 相手の感情を突き放すみたいで、罪悪感を感じてしまいます 「相手の感情は相手に返す」というのは、無関心になることでも、冷たく突き放すことでもありません。相手を思いやる気持ちはそのままに、「相手の感情の後始末」までは背負わないという、役割の線引きです。罪悪感を覚えるのは、あなたがそれだけ相手を大切に思ってきた証でもあります。まずは小さな場面から、少しずつ練習していけば大丈夫です。
Q. 頭では分かっていても、体が勝手に反応してしまいます それは、意志が弱いからではなく、心のアラームが長年かけて学習してきた反応だからです。知識として理解することと、体の反応が変わることの間には、どうしてもタイムラグがあります。一人で抱え込まず、安心して話せる場やグループ講座など、他者と一緒に練習できる環境を活用することも、大きな助けになります。
自分の心を自分で守れるようになるほど、過食に頼る必要は少しずつ減っていきます。
今日から急に完璧にできるようにならなくても、大丈夫です。「あ、今、相手の感情を引き受けそうになったな」と気づけたら、それだけでもう一歩前進しています。気づく回数が増えていくうちに、少しずつ、相手の顔色よりも自分の心の声に耳を傾けられるようになっていきますよ。
とはいえ、長年の癖を一人で手放していくのは簡単ではありません。誰かの感情に巻き込まれて苦しい思いをしている、繊細なあなたのために、共依存についての動画セミナーを無料でプレゼントしています。
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大橋とも(オレンジ)|公認心理師|『親子過食卒業レッスン』主催
25年間の摂食障害当事者経験と専門知識を活かし、親子過食卒業レッスンのグループ講座や個別セッションで、過食に悩む方とそのご家族をサポートしています。著書に『わが子が摂食障害になったら読む本』。
本記事の内容は、著者の専門知識と実体験に基づく一般的な情報です。個々の症状への対応については、必ず医療機関・専門家にご相談ください。

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