「お母さん、私も治りたい」と言われたら、親は何をすればいいのか

ある日突然、お子さんがぽつりと言いました。
「お母さん、私も治りたい」

何年も、何年も、待ち続けた言葉かもしれません。
やっと、やっと出てきてくれた。
そう思った瞬間、心がふるえたのではないでしょうか。

そして同時に、こんな気持ちが湧いてきませんでしたか。

「今すぐカウンセリングにつなげないと!」
「この子が治る気になったこのタイミングを、逃してはいけない」

目次

「今すぐ動きたい」と思うのは、とても自然なことです

私のところにも、
「うちの子が治りたいと言ったので、すぐにカウンセリングしてもらえませんか?」というご相談を、本当にたくさんいただきます。

何年も苦しむ我が子を見てきた親御さんのお立場として、
その言葉を聞いた瞬間に

「今しかない」
「このチャンスを逃したくない」

「カウンセリングを受ければこの子は楽になれるはず」と感じるのは、自然なお気持ちかと思います。

愛情があるからこそ、すぐに動きたくなる。

その中で、たくさんのご家族と接してきた中で、そして私自身が当事者として回復の道を歩んできた経験から、一つだけ、お伝えしておきたいことがあります。

「治りたい」の裏側には、「治るのが怖い」がある

「治りたい」という言葉の奥には、多くの場合、大きな葛藤が隠れています。

・症状を手放したら、どうやって自分を保っていいか分からない
・過食(拒食)でようやくバランスを取れているのに、それがなくなったら空っぽになってしまう
・普通になることが、実はいちばん怖い
・やめたい気持ちと同じくらい、やっぱりやめたくない気持ちがある
・本当にやめられるか自信がない・・・
・心に向き合いたくない・・・
・人に話すのが不安・・・
・どう思われるかが怖い・・・

私自身、25年以上の当事者としての経験を振り返っても、
「やめたい」と口にしながら、

心のどこかで
「やめるのが怖い」
「治りたい。普通になりたい。でも、摂食障害でいることで特別でいたい」
と思っていた時期が長かったんです。

だからこそ、
お子さんが「治りたい」と言った瞬間に、

「じゃあこれをやろう」「あれを始めよう」とすぐに回復の方向へ引っ張ってしまうと、

1~2回治療やカウンセリングを受けただけでやめてしまう、
キャンセル、中断、ということもよくある
んです。

それは、お子さんの意志が弱いからではありません。

「回復する方向」に進もうとアクセルを踏むほど、
治るの怖い、この先どうなるか不安、という
「今のままでいようとするブレーキ」も強く働いてしまうからなんです。

大切なのは、「行動」の前に「気持ち」を受け止めること

「治りたい」という言葉は、100%症状を手放したいのではなく、

・本当は苦しい
・どうしたらいいかわからない
・助けてほしい気持ちがある
・でもうまく言えない
・怖さや不安も同時に抱えている
・やめたいけど、やめられるか自信がない

そんな複雑な心の層が重なった、小さなSOSのかたまりなんです。

だからこそ、
お子さんが「治りたい」と口にしたとき。
親として何より大切なのは、
すぐに解決策を提示することではありません。

むしろ――

その言葉の奥にある、まだ言葉になっていない気持ちをどう受け止めるか。

ここが、回復の方向へ進むためのとても重要なポイントになります。

たとえば、

・怖いと思っていることを、怖いと言っていいと伝える
・「治りたい」と「やめたくない」が同時にあっても自然なことだと伝える
・急かさず、けれど見放さず、隣にいる姿勢を示す
・お子さんが選べる選択肢は提示する。でも、押し付けない。

こうした関わり方一つで、お子さんが本当に回復へ歩き出せるかどうかが大きく変わっていきます。

さらに――

まだお子さん自身が回復への準備が整っていなくても、
「お母さんを安心させたい」
「お母さんに嫌われたくない」
「喜ばせたい」という思いから

「治りたい」と言っていることも、実はよくあります。

だからこそ、
お子さんが「治りたい」と言ったときに、

どんな言葉をかけるのか、
どんなタイミングで寄り添うのか、
どう関わっていけばいいのかは、
一人ひとりの状況によって異なります。


※栄養状態や緊急度によっては、医療のケアが優先されることもあります。

だからこそ、
お子さんをカウンセリングにつなげる前に、

親御さん自身が「関わり方」を練習し、
お子さんの揺れ動く気持ちに合わせた対応をしていきませんか?

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よくあるご質問

Q. 子どもが「治りたい」と言ったら、すぐにカウンセリングを予約すべきですか?

A. 必ずしもそうとは限りません。まずは「治りたい」という言葉の奥にある気持ちを、ご家族として受け止める関わりが先に必要な場合が多くあります。焦って行動につなげる前に、お子さんとの関わり方を見直すことが、結果的に回復への近道になることがあります。

Q. 「治りたい」と言った後、また症状が出てきました。これは後退ですか?

A. 後退ではなく、回復のプロセスの一部です。「治りたい」と「やめたくない」という相反する気持ちを行き来しながら進んでいくのは、多くの当事者に共通する自然な過程です。

Q. 親として、何を話しかければいいのか分かりません。

A. 「何を話すか」より先に、「どう受け止めるか」を整えることが大切です。体験講座では、その具体的な関わり方を、事例に沿ってお伝えしています。

お子さんの「治りたい」を、本当の回復の一歩にできるかどうかは、その言葉をどう受け止めていくかがポイントです。
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この記事を書いた人

公認心理師|orange-mindful主宰。親子過食卒業レッスンを運営し、著書『わが子が摂食障害になったら読む本』(Amazon「ストレス・心の病気」部門予約1位)を出版。専門資格に加え、自身も25年以上、摂食障害の当事者としてこの道を歩んできた経験を持つ。

※本記事は摂食障害の回復支援に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的診断や治療の代替となるものではありません。深刻な症状がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。

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