拒食・過食・過食嘔吐…わが子の「治りたい気持ち」の見つけ方

「どうしてこの症状が出るんだろう」その奥にあるものを、一緒に探しました
「今日は食べられたかな」「また症状が出てしまった」「どうしてやめられないんだろう」――。
お子さんの摂食障害と向き合っていると、毎日目に入ってくるのはどうしても「症状」の部分ではないでしょうか。過食した、拒食した、また体重のことばかり気にしている。そうした一つひとつに、お母さまの心がすり減っていく。
でも、もし今までとは少し違う見方ができたら――。
「この子の中にある“治りたい”って、どこなんだろう?」
2026年9月親子過食卒業レッスンお母さま講座を開催しました!今日は、当日どんなお話をしたのか、そして参加されたお母さまたちにどんな気づきがあったのかをレポートします。

この記事を書いている人
大橋とも(公認心理師)。自身も25年以上、摂食障害の当事者として苦しんだ経験を持つ。現在は「親子過食卒業レッスン」のグループ講座や個別セッションで、摂食障害のお子さんを持つお母さまのサポートを行っている。
「病気の部分」と「治りたい部分」、両方があります
摂食障害のお子さんを見ていると、症状ばかりが目立って、まるでお子さんの全部が「病気」になってしまったように感じることがあるかもしれません。

けれど、お子さんの中には「病気の部分」と「治りたい部分」の両方があります。
私自身、当事者として苦しんでいた時期を振り返っても、「もうこのままでいい」とずっと思っていたわけではありませんでした。苦しみながらも、心のどこかでずっと「やめたい」でも、「やめられない」ともがいていたのです。
症状がどれだけ強く見えていても、その奥には、
- 良くなりたい
- 回復したい
- 生きようとする
そんな力が、確かにあります。ただ、その力は症状のように目に見えやすいものではありません。だからこそ、お母さまが”意識して探していくこと”が大切になります。

親子過食卒業レッスン資料より
ワーク「うちの子の“治りたい”って、どこ?」
講座では、実際にお子さんの中にある「治りたい気持ち」を探すワークを行いました。ここで大切なのは、「症状がなくなったら回復」と考えるだけではないということです。
今、お子さんができていること。
・自分なりに頑張っていること。
・誰かとつながろうとしていること。
・困っていることを伝えようとしていること。
・何かを知ろうとしていること。
そうした一つひとつの中に、「治りたい種」が隠れています。
参加されたお母さまたちには、「うちの子の場合は、どこだろう?」とそれぞれのお子さんを思い浮かべながら探していただきました。すると、これまで「症状」として見ていたものの中に、違う意味が見えてくることがあります。
「自分の症状のことを、少しだけ話してくれた」――それも、実は“治りたい種”だったんですね。というお声もありました。
症状を「なくす」より、治りたい気持ちを「増やす」
「症状を早くなくしてほしい」――もちろん、それは切実な願いだと思います。でも、ご本人にとって「今すぐ症状をやめる」「苦しいことを全部なくす」ということは、簡単ではありません。
だからこそ講座では、別の方向から考えます。症状をなくすのではなく、次のことを大切にします。
- 今できていることを増やす
- 今ある“治りたい”を増やす
- 小さな“治りたい種”を見つけて、広げていく
そのほうが、お子さんにとっても、ご家族にとっても取り組みやすい方法になります。
お母さまの声かけも、
「どうしてできないの?」という否定形から、
「ここは頑張っているね」
「こうしようと思ったんだね」
「そこを伝えられたんだね」という、
お子さんが今もっている力に、肯定的な気持ちを伝えるIメッセージへと変わっていきますよ!

「赤モード」「青モード」のときこそ、種は隠れている
お子さんの状態を見分ける手がかりとして、講座では「赤モード」「緑モード」「青モード」という3つのモードのお話もしました。
赤モード:イライラ・不安・過食など、興奮や焦りが強く出ている状態
緑モード:安心していて、コミュニケーションが一番うまくいく状態
青モード:シャットダウン・拒食など、心も体も閉じてしまっている状態
お子さんが赤モードや青モードにいるとき、お母さまはつい「また症状が出た」とだけ捉えてしまいがちです。でも、ポリヴェーガル理論の視点から見ると、これは心と体が「安心できていない」というサインでもあります。そして、安心できないなりに何とかバランスを取ろうとしている――それ自体が、実は生き延びようとする力、つまり「治りたい種」の一つなのです。

症状の大きさは不安のサインです
赤モードや青モードのお子さんに対して、症状そのものを注意するのではなく、まず心身の安心感を取り戻すことを優先する。そのうえで、緑モードのときに聴き方を工夫していく。この順番を意識するだけでも、親子のやり取りは少しずつ変わっていきますよ。
「聴き方」には6つのレベルがある
「子どもの話を聞いてあげたい」――そう思っていても、「何て聞けばいいの?」「どう返したらいいの?」「アドバイスしないほうがいいの?」と迷うことはありませんか。
今回の交流会では、「聴く」を耳+目+心で聴くキャッチャー役として捉え、聞き方には6つのレベルがあることをお伝えしました。
聴き方の段階(一部)
- まずは、子どもの言葉をそのまま受け取る
- 「こういうこと?」と確認する
- 言葉になっていない気持ちを受け取る
- その気持ちが出てくる背景まで理解する
- 最後には、病気を抱えた「子ども」としてだけでなく、一人の人としてその子と一緒にいる
「分かってもらえた」「お母さんは私のことを分かろうとしてくれている」――そんな体験の積み重ねが、お子さんの安心感、つまり緑モード(安心・コミュニケーションが最適な状態)につながっていきます。

お子さんの中に安心が増えると症状は減っていきます
参加されたお母さまたちの変化
今回の交流会では、同じような悩みを抱えるお母さまたちの言葉を聞くことで、こんなご感想をいただきました。(承諾を得た方のみ個人が特定できない形で紹介させていただきます)

つい子どもの病気だけに目を向けてしまいましたが、それも「自分だけじゃないんだ」と感じました。この子にも「治りたい気持ちがあること」「この子なりに回復しようとしていること」に気づきました!

つい『またやっている』と娘や自分自身の『できていないところ』を見つけていました。講座を受けて、娘にも自分にも『ちゃんとできているところ』があるし、『すごくがんばっているんだ』と気づきました
こんな風に、お子さんの「症状」ではなく「頑張っている姿」に目を向けられたお母さまが何人もいらっしゃいました。
💭 困った子ではなく、困っている子。
そして、困っている中でも治りたいと願っている子。
そのことを、お母さまたちと一緒に確認できた時間でした。
この1か月の宿題「治りたい種」を探してみませんか
講座の後は、ぜひご家庭で実践していただきたいホームワークをお伝えしました。
この1か月、「今日の娘の“回復の種”は、どこにあった?」という目で、お子さんを見てみてください。
☑ これって、もしかして治りたい気持ち?
☑ この行動にも、回復したい力があるのかな?
☑ 私は今まで、ここを見落としていたかもしれない
そんな発見が、きっとあるはずです。症状を追いかけるだけでなく、お子さんの中にすでにある回復の力を見つけていく。それが、ご家族にできる大切なサポートの一つです。
よくいただくご質問
Q. うちの子は今、症状しか見えず、「治りたい」気持ちなんてどこにもないように思えます。それでも大丈夫でしょうか。
A. はい、大丈夫です。私自身、25年以上摂食障害の当事者として過ごしていた頃、「治りたい」という気持ちを自分で感じられていた時期はごくわずかでした。でも、後から振り返ると、誰かに小さなサインを出していたり、ふとした瞬間に本音をこぼしていたり――そういう形で、確かに「治りたい種」は存在していました。見えないことと、ないことは、イコールではありません。
Q. 「治りたい種」を探しても、見つからなかったらどうすればいいですか。
A. 一人で探そうとすると、どうしても症状の大きさに目を奪われてしまいます。だからこそ、今回の交流会のように、同じ立場のお母さまたちと一緒に、それぞれのお子さんについて話しながら探すことをおすすめしています。他のお母さまの視点を借りることで、「そういえば、うちの子にも」と気づけることが少なくありません。
まとめ
摂食障害のお子さんを持つお母さまが、日々目にするのはどうしても「症状」です。でも、その奥には必ず、良くなりたい、生きようとする力があります。今回の交流会は、その力を一緒に見つけていく時間になりました。
「症状を見るたびに、どうしたらいいのか分からなくなる」「もっと子どもの力を信じて関わりたい」――そう感じていらっしゃるなら、ぜひ次回の講座にもいらしてください。一人で答えを探すのではなく、同じように悩みながらお子さんと向き合っているお母さまたちと一緒に学ぶことで、新しい発見が生まれるはずです。
お子さんの摂食障害と向き合う日々は、正解の見えないことの連続だと思います。それでも、症状の奥にある小さな「治りたい種」に、お母さまが一つでも気づけたなら、それは親子の関わり方が変わっていく、大きな一歩になります。今回の交流会が、参加されたお母さまたちにとって、そしてこの記事を読んでくださっているあなたにとって、そのきっかけの一つになれば嬉しく思います。
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