マンジャロ使えば摂食障害治りますか?

最近、SNSやニュースで「マンジャロ」という薬の名前を目にする機会が増えました。「食欲がなくなる」「簡単に痩せる」といった投稿も多く、摂食障害で苦しんでいる方やそのご家族から、こんなご相談をいただくことが増えています。
「マンジャロを使えば、摂食障害は治りますか?」
今日は、公認心理師として、そして自身も摂食障害の当事者として25年以上向き合ってきた立場から、このご質問に正直にお答えしたいと思います。
結論からお伝えすると
マンジャロは糖尿病や肥満治療のために開発された薬であり、摂食障害そのものを治療する薬ではありません。食欲を抑えることはできても、摂食障害の背景にある「心の苦しさ」は、薬だけでは解決しないのです。
マンジャロとはどんな薬なのか
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、もともと2型糖尿病の治療薬として開発され、その後、肥満症治療薬としても承認された薬です。GIP/GLP-1受容体作動薬という種類の薬で、血糖値のコントロールや食欲の抑制に働きます。
SNSでは「痩せ薬」として話題になっていますが、本来は医師の診断のもとで、明確な医学的必要性がある方に対して、慎重な経過観察を伴いながら処方されるものです。
マンジャロは摂食障害の治療薬ではない
ここは医療的に正確にお伝えしたい部分です。マンジャロは、摂食障害そのものを治療するために設計された薬ではありません。
食欲が減ることで、一時的に過食の頻度が減るように見えることはあるかもしれません。しかし、摂食障害の背景にある次のようなものが、薬によって解決するわけではないのです。
- 不安
- トラウマ
- 自己否定
- 感情調整の難しさ
摂食障害は「食べ方の問題」に見えて、実は「心の防衛反応」であることがほとんどです。その根っこの部分に薬は直接届きません。
過食は「意志が弱い」からではない
過食は、本人の意志の弱さが原因ではありません。心と体が、必死にバランスを取ろうとしている結果として起きているのです。
もし薬によって食欲だけを抑えることができたとしても、その奥にある苦しさそのものは残ってしまうことがあります。その結果として、別の依存行動に移ってしまったり、かえって苦しさが強まってしまったりするケースも考えられます。
※これはすべての方に当てはまるものではなく、そうした可能性があるという一つの見方としてお伝えしています。薬の使用については、必ず主治医とよくご相談ください。
回復に本当に必要なもの
私が本の中でもお伝えしているのは、回復とは「食べなくなること」ではない、ということです。
回復とは、安心して次のことができるようになる土台が育つことだと考えています。
- 自分の感情を、感じられるようになること
- 人とつながれるようになること
- 自分を責めなくて済むようになること
食べることでしか心を守れなかった時間が長ければ長いほど、その土台を育て直すには時間がかかります。だからこそ、薬で食欲を止めることだけをゴールにしてしまうと、本当の意味での回復から遠ざかってしまうことがあるのです。
まとめ:マンジャロを否定したいわけではありません
誤解のないようにお伝えしたいのですが、マンジャロという薬そのものを否定したいわけではありません。必要な方には、医師の管理のもとで有効な治療になることもあります。
ただ、摂食障害の回復を考えるときには、「食欲を止めること」だけに目を向けるのではなく、「なぜ食べることで心を支えなければならなかったのか」という背景にも、目を向けていただきたいと思っています。
『わが子が摂食障害になったら読む本』より
拙著『わが子が摂食障害になったら読む本』では、食行動だけを見るのではなく、「なぜ食べることでしか心を守れなかったのか」という視点から、回復への道筋をお伝えしています。
「食べることを止める」のではなく、「安心して生きられるようになること」。
それが、私が考える本当の回復です。
この記事を書いた人
大橋とも(オレンジ)|公認心理師
摂食障害専門の「親子過食卒業レッスン」代表。公認心理師として、子どもの摂食障害に悩む親御さんへのサポートを行う一方、自身も25年以上にわたり摂食障害の当事者としての経験を持つ。著書『わが子が摂食障害になったら読む本』はAmazon「ストレス・心の病気」部門で予約1位を獲得。「親子過食卒業レッスン」を中心に、オンライン講座やセミナーを通じて、食べることに苦しむ親子の回復をサポートしている。
よくある質問
Q. マンジャロを飲めば過食は止まりますか?
A. 食欲が抑えられることで、一時的に過食の頻度が減るように見えることはあります。ただし、過食の背景にある不安や自己否定などの心理的な要因が解決するわけではないため、根本的な回復にはつながらないケースが多いと考えられます。
Q. 摂食障害の治療にマンジャロは使われますか?
A. マンジャロは糖尿病・肥満症治療薬として承認されている薬であり、摂食障害の治療薬として承認されたものではありません。使用を検討する場合は、必ず摂食障害の治療に詳しい医師にご相談ください。
Q. 摂食障害の回復には何が必要ですか?
A. 食行動そのものを止めることではなく、安心して感情を感じられること、人とつながれること、自分を責めなくて済むようになることなど、心の土台を育て直していくプロセスが必要だと考えています。
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※本記事は医学的な診断や治療方針を提供するものではありません。薬の使用に関しては、必ず主治医にご相談ください。

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