「食べること」が問題ではない過食も拒食も、実は同じサインかもしれません

摂食障害と家族のこころ
「食べること」が問題ではない
過食も拒食も、実は同じサインかもしれません
公認心理師・大橋とも(25年の摂食障害の当事者経験を持つ専門家)
「どうして食べるの?」
「どうして食べないの?」
摂食障害のお子さんを前にすると、ご家族はどうしても「食べる・食べない」という行動に目が向きます。
でも、公認心理師として、そして25年間摂食障害に苦しんできた私が感じるのは、本当の問題は、食べることではないということです。
過食も拒食も、奥で起きていることは同じ
過食も拒食も、一見すると正反対に見えますよね。食べ過ぎる人。食べられない人。
でも、その奥で起きていることは、とてもよく似ています。それは、
「一人では抱えきれないほどの苦しさを、
身体が何とか処理しようとしている状態」
身体は、命を守ろうとしている
私たちの脳や神経は、安心できない、悲しい、怖い、寂しい、孤独、怒り──そんな大きすぎる感情を抱えると、そのまま感じ続けることが難しくなります。
すると身体は、食べることで落ち着こうとしたり、逆に食欲を止めたり、さまざまな方法で生き延びようとします。
つまり、摂食障害は「意志が弱いから」でも、「甘え」でもありません。身体が命を守ろうとしている反応でもあるのです。
「食べさせよう」だけでは変わらない理由
だからこそ、「もっと食べなさい」「食べ過ぎないように」という言葉だけでは、なかなか改善しません。
症状だけを止めようとしても、身体は「まだ危険だよ」と感じ続けているからです。
家族にできること:安心を増やす関わり
では、家族には何ができるのでしょうか。私は講座でもよくお伝えしていますが、最初に必要なのは、安心を増やす関わりです。
安心とは、何でも許すことではありません。正しいことを教えることでもありません。
「あなたの気持ちを知りたい。」
そんな姿勢が、少しずつ神経を落ち着かせていきます。
「食べることさえ治れば」ではなかった
私は以前、「食べることさえ治れば幸せになれる。」そう思っていました。
でも実際には違いました。必要だったのは、
- 安心できる人とのつながり
- 安心できる身体
- 安心できる居場所
その土台ができ始めたとき、食べることも、少しずつ変わっていったのです。
もし今、お子さんの食べ方ばかりが気になって苦しくなっているお母さんがいたら、一度だけ、こんな問いを自分に向けてみてください。
「この子は今、何を感じているのだろう。」
その問いが、回復への第一歩になることがあります。
過食も拒食も、敵ではありません。
その症状は、言葉にならなかったSOSを、身体が必死に伝えてくれているサインなのかもしれません。
だから私は今日も、「食べること」の奥にある心と身体を、一緒に見つめていきたいと思っています。
「この子は今、何を感じているのだろう」
その視点を、一緒に育てませんか?
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よくあるご質問
Q. 過食と拒食、両方を繰り返す場合も同じ考え方で大丈夫ですか?
A. はい。過食と拒食を行き来するケースも珍しくありません。どちらも「苦しさを身体が処理しようとしているサイン」という点では共通しているため、行動の変化に一喜一憂するより、その奥にある気持ちに目を向けることが大切です。
Q. 「気持ちを知りたい」と伝えても、子どもが話してくれません。
A. すぐに話してもらえなくても大丈夫です。安心は一度の会話で生まれるものではなく、日々の関わりの積み重ねで少しずつ育っていきます。焦らず、同じ姿勢を続けることが力になります。
Q. 病院での治療と、こうした家族の関わりはどちらを優先すべきですか?
A. どちらか一方ではなく、両輪で進めることをおすすめしています。医療的なケアで身体の安全を確保しながら、ご家庭では安心できる関わりを積み重ねていくことが、回復への近道になります。
本記事は、公認心理師としての知見および筆者自身の当事者経験にもとづく一般的な情報提供を目的としており、医学的診断や治療を代替するものではありません。摂食障害の症状が強い場合や、身体的な危険を伴う場合は、必ず医療機関にご相談ください。
大橋とも(公認心理師)
25年以上にわたる摂食障害の当事者経験と、公認心理師としての専門知識を活かし、摂食障害に悩む子どもを持つ親への実践的サポートプログラム「orange-mindful」を運営。著書『わが子が摂食障害になったら読む本』(Amazon「ストレス・心の病気」部門予約1位)。FM茨城「Diversity News」出演など、メディアでも発信を行っている。

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